vol.6 インストラクター向け!ケトジェニックダイエットをレッスンに取り入れるコツ


インストラクター向け!ケトジェニックダイエットをレッスンに取り入れるコツ

ケトジェニックダイエットをレッスンに取り入れたいインストラクターの方もいらっしゃるでしょう。本章では、インストラクター向けにケトジェニックダイエットの取り入れ方を解説していきます。

体重管理とマイクロダイエット

第4章でも述べましたが、ダイエットを成功させるには感覚に頼らず、理論的に行うこと。そして、食欲とうまく付き合うことです。

 

「運動して痩せましょう」というだけではモチベーションは続かないため、以下4つの要素を統合して指導をしましょう。

 
  1. アンダーカロリー

  2. PFCバランス

  3. 食欲対策

  4. NEATを意識した活動量UP

 

この4要素をクライアントに理解してもらい、生活に取り入れてもらうことが重要です。

1.アンダーカロリー

「消費カロリー < 摂取カロリー」の状態では体重は増える傾向があり、痩せることが難しいです。

 

しかし、やみくもに運動をして消費カロリーを増やしたり、摂取カロリーを劇的に減らしたりするダイエットでは、すぐに無理が来て続きません。

 

まずはカロリー消費量をきちんと把握してもらい、「どの程度ならカロリー摂取をしても良いのか」を把握してもらうことが重要です。以下は計算式の一例です。

 

ミフリンセントジョール方式

  • 男性:BMR = (10 × 体重[kg]) + (6.25 × 身長[cm]) - (5 × 年齢[歳]) + 5

  • 女性:BMR = (10 × 体重[kg]) + (6.25 × 身長[cm]) - (5 × 年齢[歳]) - 161

 

ミフリンセントジョール方式は信頼のできる計算式として、幅広く用いられています。こちらの方式を使い、まずはご自身の基礎代謝を計算してみましょう。

 

以下のようなツールを使って簡単に計算することもできます。

TDEEの計算

2.PFCバランス

PFCバランスは、食事中の主要な栄養素であるタンパク質(Protein)、脂質(Fat)、糖質(Carbohydrate)の摂取バランスを指します。

 

体重だけでなく理想の見た目を目指すには、体重を落とすだけでなく筋肉を付けていくことも重要です。ダイエットの目的はただ体重を落とすだけではないはずです。どのような見た目になりたいのかを明確にしてもらった上で、適切なPFCバランスで食事のスタイルを確立してもらうことが大切です。

 

特に消費カロリーを極端に減らすダイエットでは、数字としての体重は落ちますが見た目が思ったほど変わらなかったり、理想の見た目に近づけなかったり、ということが多いです。これは、消費カロリーを減らしたことで筋肉が落ち、基礎代謝が落ちることで脂肪燃焼が進まないという状態になっているからです。

 

脂肪よりも筋肉のほうが重いので数字としての体重は落ちますが、満足のいくダイエットの結果にならないということは避けたいものです。

 

日々の栄養摂取量については、あすけんやカロミルなどのツールを使って管理してもらうことがおすすめです。

3.食欲対策

「アンダーカロリーやPFCバランスを意識する」といった理論を理解したとしても、日々ダイエットを続ける上では食欲ともうまく付き合っていかなければ結果は出にくいものです。

 

食欲には恒常性食欲と嗜好性食欲があるということを知り、食欲をうまくコントロールしてもらいましょう。

恒常性食欲とは

「恒常性食欲」は、生体が必要なエネルギーと栄養素を補給しようとする本能的な食欲のことを指します。

 

エネルギーのバランスを維持し、生存に必要な栄養素を取り入れるための自然なメカニズムであり、生体のホメオスタシス(恒常性)の一部です。これは体温や血圧などの他の生理学的なパラメータを制御する仕組みと同様に、生体内の均衡を維持する役割を果たしています。

 

例えば、夕食を抜いて翌朝を迎え、その後も絶食が続くと、翌日のパフォーマンスが低下する可能性があります。これは、体が通常の「恒常性」を維持できなくなり、結果としてパフォーマンスが低下するからです。

 

ダイエットにおいては、恒常性食欲を必要以上に我慢する必要はありません。

嗜好性食欲とは

「嗜好性食欲」は、食べ物の味や見た目、香り、食感などに基づいて生じる食欲や食の好みのことを指します。つまり、好みや興味に応じて特定の食べ物を選び、それに対する欲求や喜びを感じる食欲の側面を表現します。

 

分かりやすく言うと、「快楽を得るための欲望」が生じる食欲が「嗜好性食欲」です。おなかが満たされているのに、デザートを「食べたい」と感じるのはなぜでしょうか。これが俗に言う「スイーツは別腹」の現象です。このスイーツは、実際には食べなくても、次の日のパフォーマンスには影響を与えません。

 

この嗜好性食欲とうまく付き合うことがダイエットの成功の秘訣です。ダイエットをサポートする立場として、食欲対策の引き出しを持っておくのが望ましいでしょう。

 

以下はここまでのおさらいになりますが、改めて食欲をコントロールするためのコツです。

十分な脂質を摂る

ケトジェニックダイエットでは脂質が主要なエネルギー源です。十分な脂質を摂ることで、満腹感が得られ、食欲を抑えるのに役立ちます。

適切なプロテイン摂取

プロテインも満腹感を提供し、食欲を抑制するのに役立ちます。しかし、過度なプロテイン摂取はケトーシスを妨げる可能性があるため、適切なバランスを保つことが重要です。

低糖質・高繊維の食品を重点的に摂る

低糖質・高繊維の食品は、消化が遅くなり、持続的な満腹感を提供します。野菜、葉物野菜、アボカドなどがこれに該当します。

規則正しい食事スケジュールを守る

規則正しい食事スケジュールを維持することで、体内時計が安定し、食欲のコントロールがしやすくなります。

水分摂取を重視する

食事の前に十分な水分を摂ることで、胃が膨れて食欲を抑制することができます。

適度なカフェイン摂取

カフェインは食欲を抑制する効果がありますが、過剰な摂取は避けるべきです。個々の体調に合わせて摂取量を調整しましょう。

ストレス管理

ストレスは食欲に影響を与えることがあります。リラックスやストレス軽減の活動を取り入れ、心身のバランスを保つことが重要です。

適切な睡眠を確保する

睡眠不足は食欲を増進させる可能性があります。十分な睡眠を確保することで、食欲の管理がしやすくなります。

4.   NEATを意識した活動量UP

多くの人は急に毎日ジムに通うなど、続かない運動を取り入れがちです。それよりも前に家事や通勤など、誰もが当たり前のようにしている「歩行」を意識して”日常生活での活動量(NEAT)”を増やすのが大切です。

NEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis)とは

NEATは、日常の活動、例えば家事や通勤などで消費されるカロリーのことを指します。しっかりとした運動ではなく、立っている姿勢を維持したり家事を行ったりする日常生活の動きによって発生するものです。

 

日々、運動を続けることは難しいですが、当たり前に行う通勤や散歩、家事などでの消費カロリーを増やしていけば負担なくダイエットを続けることができます。

 

以下の図をご覧ください。「一般体格者」のうち、1日の消費エネルギーのうち2割程度はNEATによるものです。立位・歩行運動の時間が座位行動よりも多いことで、NEATを増やしていくことができます。ある研究では、肥満者と非肥満者を比較すると、肥満者は1日に150分も座っていることが多く、これは約350kcal(ショートケーキ1個分相当)のエネルギーに相当します。

NEATを知れば、日々の消費カロリーを増やすために「ジムに通いましょう」「トレーニングを毎日やりましょう」と指導するだけでなく、「1駅分は歩きましょう」「リモートワークなら立って仕事をする時間も増やしましょう」「家事を積極的にやりましょう」といった幅広い指導ができるようになります。

 

その他にも、以下のように日々の生活でNEATを増やしていくことができます。

 
  • テレビを長時間観ないようにする(座位の時間を減らす)

  • 電車の中で席があっても座らない

  • バスや車を使わず1駅分は歩く

  • エレベーターやエスカレーターの代わりに階段を使う

  • パソコンに向かうときは背筋を伸ばす

  • 皿洗いや料理、歯磨きのときにはつま先立ちにする

  • ガーデニングや掃除を積極的にする

 

ジムに通ったり、ジョギングをしたり、意識的に運動をしなくても、こうした行動を心がけることで代謝が上がり、カロリーを消費できるようになります。

目標の明確化

これらの基本を抑えた上で、次に重要なのが目標設定です。目標や期限も定めずに「なんとなく痩せたい」では成功しないでしょう。どんなダイエット方法にも必ず停滞期があり、モチベーションは継続しないということは理解しなければなりません。

 

しかし、目標があれば停滞期でもくじけずに継続できるパワーを得ることができます。

 

「〇〇までに体重〇キロ、体脂肪率〇%」など、具体的で計測可能な目標を設定したり、「芸能人の〇〇の見た目が理想!」など、イメージする対象を定めたりすることも効果的です。

 

目標を持つことで、モチベーションが保たれ、ダイエットの成功につながります。

 

ダイエットは心身が両輪となって初めて成功するものです。インストラクターとして、必ず目標の設定をサポートしましょう。

 

注意点

最後にケトジェニックダイエットを指導する上で注意したい点を紹介します。

注意点1:体重=見た目ではない

同じ重さでも体脂肪の方が体積が大きいことに留意する必要があります。

 

具体的に言えば、体重が60kgで体脂肪率が10%の人と体重が60kgで体脂肪率が30%の人では、見た目に劇的な差が生じます。

 

ダイエットの基本として毎日体重計に乗ることが挙げられますが、その数値に日々一喜一憂する必要はありません。ダイエットは見た目や体脂肪率の改善に焦点を当て、健康的で持続可能な進捗を重視するべきだと教えてあげましょう。

注意点2:週単位での体重管理が大切

ダイエットを始めると、初期には体重が比較的容易に減少しますが、これは主にため込んでいた水分が排出される結果です。ただし、体組成計を使用するとわかりますが、体脂肪や筋肉量は短期間で急激に変化することはありません。

 

単純な体重計だけでなく、体組成計を導入し、体重だけでなく体脂肪率や骨格筋量などをトータルで把握することが重要です。これにより、より正確で健康的なダイエットの進捗をモニタリングできます。

注意点3:摂取カロリーを極端に減らさない

ダイエットにおいて、摂取カロリーを極端に減らすことは避けるべきです。なぜなら、極端な制限によって筋肉の生成に必要な栄養が不足し、結果的に筋肉が減少して代謝が低下するからです。この悪循環に陥ると、痩せにくい身体になってしまいます。

 

意識すべきは、アンダーカロリーを目指すことです。つまり、摂取カロリーが消費カロリーよりも少ない状態を作り出すことです。摂取カロリーを極端に減らす必要はありません。適正なカロリーを摂取しつつ、活動量をアップさせることで、体脂肪が燃えやすい身体を作り上げることができます。適度な食事と運動のバランスを保ちながら、健康的かつ持続可能なダイエットを指導しましょう。

 

また、ダイエットを始める前に、摂取カロリーと消費カロリーのバランスを理解しておくことが重要です。このバランスを知ることで、適切な食事や運動を計画しやすくなります。

 

オススメの方法として、あすけんやカロミルなどのツールを利用して食べたものからカロリー計算を行うことが挙げられます。これらのツールは手軽に利用でき、摂取したカロリーを把握するのに役立ちます。

注意点4:ケトジェニックの適切なPFCバランス3:6:1

アンダーカロリーとNEATの意識を取り入れつつ、ケトジェニックダイエットを導入し、理想の身体作りを進めていきましょう。ケトジェニックでは適切なPFC(タンパク質、脂質、炭水化物)バランスが重要で、一般的な比率とは異なり、3:6:1が推奨されています。

 

たとえば、同じカロリーでもステーキとポテトチップスでは腹持ちや満足度が大きく異なります。これは咀嚼などの影響もありますが、摂取する食品のPFCバランスも大きく影響します。理想的なPFCバランスを把握し、あすけんなどのツールを利用して意識的に取り入れることで、食欲をコントロールし、アンダーカロリーを無理なく実現できるようになります。

 

ケトジェニックダイエットでは、通常よりも脂質の割合が多いです。この考え方を取り入れることで、良質な脂質が素早くエネルギーになり、活動量の増加にも良い影響を与えます。ケトジェニックダイエットのアプローチを組み合わせることで、アンダーカロリーを維持しながら、体脂肪が燃えやすい身体へと仕上げていくことが可能です。

注意点5:ケトジェニックで不足しがちな栄養素

ケトジェニックダイエットを実践する際、炭水化物の摂取量を減らすことが主要なポイントですが、これにより食物繊維やミネラルなどの栄養素が不足しがちとなります。

 

この栄養不足を効果的に補うためには、サプリメントなどを利用することが重要です。ケトジェニックダイエットにおいて特に注意が必要な栄養素をサプリメントで効率よく摂取することで、バランスの取れた食事プランを実現することができます。