ケトジェニックダイエットのよくある間違い
第2章ではケトジェニックのメリットについて解説しましたが、万能なダイエット方法というわけではありません。
きちんとケトジェニックダイエットのデメリットや、よくある間違いを理解した上で、正しく行う必要があります。
本章では、ケトジェニックダイエットのよくある間違いについて解説をしていきます。
ケトジェニックダイエットはすぐに結果が出る?
ケトジェニックダイエットの結果は個人により異なります。一般的に、初めての数週間は体が新しいエネルギー源に適応する期間であり、この期間中に体重の減少が見られることがあります。これは体内の糖分を使い果たし、脂質をエネルギー源として利用し始めるためです。
このため、すぐに結果が出るかどうかは個人の体質、生活スタイル、運動習慣などに依存します。また、ケトジェニックダイエットが他の健康状態や目標とどのように合致するかも影響します。
重要なのは、ケトジェニックダイエットを始める際には、適切な知識を得て計画的に進めることです。急激な結果を求めるよりも、持続可能で健康的な方法でダイエットを行うことが重要です。
ケトジェニックダイエットとロカボダイエットは同じ?
ケトジェニックダイエットとロカボダイエットを混同する人は少なくありません。
しかし、この2つのダイエット方法には共通点はありつつも、異なる点が多いです。
以下にケトジェニックダイエットとロカボダイエットの比較表を掲載します。
ケトジェニックダイエット |
ロカボダイエット |
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糖質摂取 |
ケトジェニックダイエットでは、非常に低い糖質制限が特徴です。通常、1日の糖質摂取量は20〜50グラム以下とされています。 糖質の制限が高まると、身体はケトン体を生成し、これが主要なエネルギー源となります。 |
低炭水化物ダイエットも糖質制限がありますが、ケトジェニックダイエットほど極端ではなく、通常は50〜150グラムの範囲です。 血糖値の急激な上昇を避けることが目的とされます。 |
タンパク質摂取 |
タンパク質の摂取は中程度で、適切なレベルを維持します。過剰なタンパク質摂取がケトン体生成を妨げる可能性があります。 |
タンパク質の摂取量は中程度で、ケトジェニックダイエットと同様、適切なバランスが求められます。 |
脂質摂取 |
脂質が主要なエネルギー源となります。脂質の割合は摂取カロリーの70-75%を占めることがあります。 脂質の中には飽和脂質酸や中鎖脂質酸なども含まれます。 |
脂質の摂取量は、個々の目標や好みにより変動します。一般的には中程度の脂質制限があるものの、ケトジェニックダイエットほど高脂質ではありません。 |
ケトーシスの有無 |
ケトジェニックダイエットの目標は、ケトーシスの状態に達することです。これは脂質の代謝が高まり、ケトン体が生成される状態を指します。 |
低炭水化物ダイエットでは、ケトーシスの状態に達する必要はありません。主眼は糖質の制限にあり、脂質の代謝に関する厳格な目標は存在しません。 |
一方、ケトジェニックダイエットとロカボダイエットには共通点もあります。
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糖質制限
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どちらのダイエットも糖質の制限が中心となっています。
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タンパク質の摂取
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どちらのダイエットも中程度のタンパク質摂取
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自然な食品の重視
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どちらのダイエットも野菜、肉、魚、健康な脂質が重要な食材です。
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ケトジェニックダイエットで摂取する脂質はなんでも良い?
脂質中心のケトジェニックダイエットだからといって、脂質であればなんでも良いわけではありません。健康を維持しつつケトジェニックダイエットで痩せるためには、できるだけ良質な脂質を摂ることが大切です。ここでは、ケトジェニックダイエットにおすすめの脂質を3つ紹介します。
1. MCTオイル
ケトジェニックダイエットでMCT(中鎖脂質酸)オイルを使う理由はいくつかあります。以下に、その主な理由を説明します。
ケトーシスの促進
MCTオイルは肝臓で速やかにケトン体に変換される特性があります。これにより、エネルギー供給源としてのケトン体を増加させ、ケトーシスの状態に迅速かつ効果的に達することが期待されます。
持続的なエネルギー供給
MCTオイルは他の脂質よりも速く代謝され、身体に急速かつ持続的なエネルギーを提供します。これにより、食事やトレーニング時に安定したエネルギー供給が期待できます。
脂質の摂取のサポート
ケトジェニックダイエットでは高脂質食が求められますが、一部の人は脂質の摂取に苦労することがあります。MCTオイルは脂質の容易な補充源となり、食事の脂質バランスをサポートします。
代謝の向上
MCTオイルは代謝を促進し、脂質の酸化を助けることが研究で示唆されています。これにより、脂質のエネルギー利用が向上し、体脂質の減少を助ける可能性があります。
食欲抑制効果
MCTオイルは食欲を抑制する効果があり、満腹感を提供します。これにより、食事制限や断食中において、カロリー摂取を管理しやすくなります。
認知機能向上
MCTオイルはケトン体の生成を通じて脳にエネルギーを供給し、認知機能の向上に寄与するとされています。特に、長鎖脂質酸と比較して効果的に血脳関門を通過しやすいとされています。
2. 亜麻仁油・えごま油
ケトジェニックダイエットにおいて亜麻仁油やえごま油もおすすめです。以下に、その主な理由を説明します。
オメガ-3脂質酸の豊富な源
亜麻仁油とえごま油は、α-リノレン酸(ALA)と呼ばれるオメガ-3脂質酸の豊富な源です。これは体内でEPA(エイコサペンタエン酸)およびDHA(ドコサヘキサエン酸)に変換され、心血管の健康や炎症の抑制に寄与します。
抗酸化作用
亜麻仁油やえごま油には、ビタミンEやポリフェノールなどの抗酸化物質が含まれています。これらの成分は体内の酸化ストレスを軽減し、細胞を保護する働きがあります。
脳の健康
オメガ-3脂質酸は脳の機能に重要な影響を与えることが知られています。特にDHAは脳細胞の構造に関与し、認知機能の維持や向上に寄与します。
心血管保護
オメガ-3脂質酸は心血管疾患のリスクを低減させるとされています。血管を保護し、血液中のコレステロールを調整する効果があります。
炎症の抑制
オメガ-3脂質酸は抗炎症作用があり、炎症性サイトカインの放出を抑制することが示唆されています。これは慢性的な炎症のリスクを低減する助けとなります。
3. オリーブオイル
ケトジェニックダイエットでオリーブオイルを使用する理由はいくつかあります。以下に、その主な理由を説明します。
ヘルシーな脂質の供給
オリーブオイルは主にモノ不飽和脂質酸(オレイン酸)を含んでおり、これは心血管健康に良いとされています。ケトジェニックダイエットでは、脂質の摂取が重要であり、健康な脂質源を摂ることが推奨されています。
抗酸化物質の豊富
オリーブオイルにはビタミンEやポリフェノールといった抗酸化物質が豊富に含まれています。これらの成分は酸化ストレスを軽減し、細胞を保護する働きがあります。
満腹感の提供
オリーブオイルには飽和脂質酸よりも軽い口当たりのモノ不飽和脂質酸(オレイン酸、パルミトレイン酸など)が多く含まれています。特にオレイン酸は脳の視床下部にある満腹中枢を刺激し、食欲を抑える作用があると注目されています。 満腹感を提供し、食事中の過剰なカロリー摂取を抑制する可能性があります。
炎症の抑制
オリーブオイルには抗炎症作用があるとされる成分が含まれています。これにより、慢性的な炎症のリスクを低減する助けとなります。
食事の味付けと多様性
オリーブオイルは食事の味を豊かにしてくれます。これにより、ケトジェニックダイエット中でも食事が美味しく満足感を得やすくなります。
ただし、摂取する際には適切な量に注意し、栄養バランスを考慮することが重要です。また、オリーブオイルの品質にも注意を払い、Extra Virginなど品質の高いものを選ぶのがよいでしょう。
タンパク質はしっかり摂ってもいい?
ケトジェニックダイエットでは、タンパク質の摂取量を適切に調整する必要があります。大量にタンパク質を摂ることが好ましくない理由はいくつかあります。
糖新生の促進
過剰なタンパク質摂取が糖新生を促進する可能性があります。これは、体が不足している糖分をタンパク質から生成しようとする生理的な反応です。糖新生が進むと、ケトーシスの状態が損なわれる可能性があります。
インスリンの影響
タンパク質の摂取も一定量以上になると、インスリンの分泌が促進されます。ケトジェニックダイエットでは、低糖質で低インスリンを維持することが重要なので、過剰なタンパク質摂取はこれを妨げる可能性があります。
ケトン体の生成の阻害
過剰なタンパク質摂取が、タンパク質代謝においてケトン体生成を阻害する可能性があります。ケトン体が不足すると、ケトーシスの状態が弱まる可能性があります。
食事全体の脂質比率のバランス
ケトジェニックダイエットでは、脂質の摂取が非常に重要です。過剰なタンパク質摂取があると、脂質の割合が減少し、ケトーシスの維持が難しくなります。したがって、ケトジェニックダイエットでは、適切なタンパク質摂取量を確保しつつ、脂質の摂取を重視することが重要です。
ケトジェニックダイエットには理想的なPFCバランスがあります。PFCバランスとは、タンパク質・脂質・炭水化物のバランスを指します。詳細は第4章で解説します。
炭水化物は一切取ってはダメ?
ケトジェニックダイエットでは、炭水化物を制限することが基本的な原則ですが、一切摂らない必要はありません。このダイエットは通常、非常に低炭水化物高脂質(LCHF)な食事プランで、炭水化物の摂取量を制御して体内のケトーシス状態を維持することを目指します。
このダイエットでは、通常、一日の総炭水化物摂取量を20〜50グラム以下に制限します。これにより、体は脂質を主要なエネルギー源として利用し、ケトーシスの状態に入りやすくなります。
個人差がありますので、ケトーシスの状態を維持しながらも、摂取できる炭水化物量は人によって異なります。特に初めてケトジェニックダイエットを始める際は、自分の体に合った炭水化物摂取量を見つけるために試行錯誤が必要です。
炭水化物摂取を制限するためには、穀物、砂糖、高糖度の果物などの高炭水化物食品を避ける必要があります。代わりに、健康的な脂質、適度なタンパク質、野菜などを重点的に摂取しましょう。炭水化物を一切取らないわけではなく、摂取量を制御し、体に合った範囲内で選ぶことがポイントです。
ケトジェニックダイエット中は運動はダメ?
ケトジェニックダイエットとトレーニングの組み合わせは相性が良いです。有酸素運動が脂質を効果的に燃焼させるためです。有酸素運動は、ケトン体などの脂質をエネルギー源として利用するため、筋肉を保持しつつ体脂質を減少させる効果があります。
有酸素運動と無酸素運動のバランスは、目標や体調に応じて適切に調整することが重要です。たとえば、体脂質を減らしたい場合は有酸素運動を主体にし、無酸素運動はサポート的に行うのが良いでしょう。逆に、筋肉量を増やしたい場合は無酸素運動を主体にし、有酸素運動は回復促進や代謝向上のために行うと良いでしょう。
ケトジェニックダイエットは知識がなくても安全にできる?
ケトジェニックダイエットは通常の食事パターンとは異なるため、注意が必要です。以下の点を意識しながら、食事プランを立てましょう。
栄養素不足
ケトジェニックダイエットは炭水化物摂取を極端に制限するため、果物、穀物、一部の野菜などから得られるビタミンやミネラルが不足する可能性があります。これにより、栄養バランスが崩れ、欠乏症のリスクが高まります。サプリメントなどで補完することがおすすめです。
食物繊維不足
穀物や根菜など、食物繊維が糖質とセットになっているものが多くあります。このため、糖質を制限することで食物繊維が不足しがちです。きのこ、海藻、緑の野菜(ブロッコリー、葉野菜など)、白の野菜(カリフラワー、大根など)などは糖質がほとんど含まれておらず、かつ豊富な食物繊維が含まれています。ケトジェニックダイエットでは、芋や根菜などの糖質の多い食品に気をつけながら、積極的にこれらの野菜を食事に取り入れることが重要です。
タンパク質過剰
ケトジェニックダイエットでは脂質の摂取が強調されますが、一部の人はタンパク質を過剰に摂ることがあります。タンパク質摂取量が増えると、アミノ酸が分解されてケトン体が増加するためです。
ダイエットをしている一般の人にとっては良いことかもしれませんが、既にケトン体が豊富な状態のケトジェニックダイエット中の人は、さらなるケトン体増加によりケトアシドーシスのリスクが高まる可能性があります。
ケトアシドーシスとは、糖尿病急性合併症である「糖尿病昏睡」のひとつ。喉の乾き、多尿、全身の倦怠感などの症状に引き続いて急激に発症し、悪化すると呼吸困難や吐き気、嘔吐、腹痛、意識障害などが起こります。
タンパク質の摂り過ぎはグルコースに変換され、血糖値を急上昇させてしまい、ケトジェニックの効果を逆転させる可能性があります。これは好ましくありません。
ケトジェニックダイエット中に水分摂取は意識しなくても良い?
ケトジェニックダイエットにおいても水分摂取は非常に重要です。以下はその理由です。
尿量の増加
ケトジェニックダイエットでは、糖質を制限することにより体内の糖分が減少し、それに伴って水分も排泄されます。このため、尿量が増加しやすくなります。
脱水症状の予防
炭水化物の制限により、グリコーゲン(肝臓や筋肉に蓄えられたエネルギー源)が減少します。グリコーゲンには水分が結びついているため、その減少により体内の水分も失われます。これにより、脱水症状のリスクが高まります。十分な水分を摂ることでこれを予防できます。
電解質バランスの維持
ケトジェニックダイエットでは、尿から多くの塩分が排泄されることがあります。適切な水分と共に適切な電解質を摂取することで、電解質バランスを維持できます。
代謝のサポート
水分は体温の調整や代謝にも重要な役割を果たしています。十分な水分を摂ることで、代謝がスムーズに行われ、ダイエットの効果が向上します。
ケトジェニックダイエット中は特に水分摂取に注意が必要です。一般的な目安として、1日に体重1キログラムあたり30~35ミリリットルの水を摂ることが推奨されていますが、個人差がありますので、自分の体調に合わせて水分補給を行うことが重要です。
ケトジェニックダイエットに副作用はない?
ケトジェニックダイエットは一般的に安全で効果的なダイエット法とされていますが、副作用が現れることがあります。以下に、ケトジェニックダイエットの副作用をいくつか挙げます。
ケトフルー
ケトジェニックダイエットを始めた初期に、体が新しい代謝状態に適応しようとする際に「ケトフルー(Keto Flu)」と呼ばれる症状が現れることがあります。これには頭痛、吐き気、倦怠感、めまいなどが含まれ、通常は数日から数週間で改善されます。
電解質の不均衡
ケトジェニックダイエットでは尿から多くの塩分が排泄されるため、電解質のバランスが崩れることがあります。これにより、筋肉けいれんや不快感が生じる可能性があります。十分な水分と適切な電解質の摂取が重要です。
便秘
食物繊維の摂取が制限されるため、便秘が起こることがあります。適切な水分と食物繊維の摂取、運動などで対処できます。
肝機能の変化
ケトジェニックダイエットは肝臓での脂質代謝に影響を与える可能性があります。一部の人では肝機能の変化が見られることがありますが、通常は軽度で自己制御されることが多いです。
脂質過剰
ケトジェニックダイエットを誤って高脂質な食事にしすぎると、脂質摂取が過剰になる可能性があります。これは健康に悪影響を与えることがあります。
重要なのは、ケトジェニックダイエットを始める前に医師や栄養士と相談し、適切なアプローチを見つけることです。個人差があるため、自分の体調に合わせた食事プランを作成することが重要です。
ケトジェニックダイエットはメンタルにネガティブな影響がある?
一般的にストイックなダイエットを行うとメンタルが不安定になることがありますが、ケトジェニックダイエットが気持ちに与える影響は、いくつかのポジティブな影響が報告されています。
ケトジェニックダイエットでは、炭水化物摂取が制限されるため、血糖値が急激に上下することが少なくなります。血糖値の安定は、気分の安定やイライラの軽減に繋がります。
また、ケトジェニックダイエットで積極的に摂取することになる脂質が脳の主要なエネルギー源となります。これにより、認知機能や記憶力の向上を実感することがあります。
食事スタイルの変容がメンタルにポジティブな影響を与えるという側面もあります。
脂質とタンパク質が豊富であり、満足感が得やすいため、ケトジェニックダイエットが食欲の制御に寄与します。これがストレスや情緒的な食事への頼りすぎを軽減します。
ケトジェニックダイエットは急にやめても良い?
ケトジェニックダイエットを急にやめるのは避けるべきです。以下はその理由です。
カーボハイドレートの影響
ケトジェニックダイエットでは体が糖質から脂質へのエネルギー源を切り替えています。急激にこれを変えると、体が再び糖質を主なエネルギー源として使うようになり、これが体調不良や疲労感を引き起こす可能性があります。
水分と電解質のバランス
ケトジェニックダイエットでは、体内の水分と電解質のバランスが変わります。急激にダイエットを変更することで、これらのバランスが崩れ、デハイトレーション(脱水症状)や不調を引き起こす可能性があります。
リバウンドのリスク
ケトジェニックダイエットに限らず急激なダイエットの変更は、その後のリバウンドのリスクを高める可能性があります。体が急激な変化に対応しようとすると、リバウンド現象が起きやすくなります。
ケトジェニックダイエットからの脱却は計画的に行うべきで、他の食事スタイルに移行する場合も、糖質摂取を徐々に増やしていくと良いでしょう。