マクロダイエットとPFCバランス
本章では、ケトジェニックダイエットを本格的に取り入れるために知っておきたいマイクロダイエットとPFCバランスという考え方について解説をしていきます。
マクロダイエットについて
マクロダイエット(またはマクロ栄養素ダイエット)は、栄養摂取をマクロ栄養素(主要栄養素)に焦点を当てて行うダイエットの一形態です。マクロ栄養素には主に以下の3つが含まれます。
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タンパク質(Protein): 筋肉の構築と修復に関与し、体内の機能維持に不可欠
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脂質(Fat): エネルギー源として機能し、細胞構造やホルモンの生成にも必要
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炭水化物(Carbohydrates): 主要なエネルギー源であり、特に運動時には重要
マクロダイエットではこれらの栄養素の摂取割合を調整し、個々の目標に合わせて食事プランを作成します。通常、日々の摂取カロリーの約何パーセントをそれぞれのマクロ栄養素から摂取するかを設定します。一般的な割合には大きなバリエーションがありますが、例えば以下のような割合が挙げられます。
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タンパク質: 15-35%
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脂質: 20-35%
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炭水化物: 45-65%
個々の人によって最適な摂取割合は異なります。アスリート、ボディービルダー、オフィスワーカーなど、生活スタイルによって調整が必要です。マクロダイエットは食事の柔軟性が高く、個々の好みや制限に合わせて調整できるため、人気のあるダイエット方法の一つです。
PFCバランスについて
先ほどマイクロダイエットの説明でも出ましたが、「PFCバランス」とは、タンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の3つの栄養素のバランスを指します。
これらの栄養素を適切な割合で摂取することは、健康的な食事習慣を構築し、体重管理やエネルギー供給の面で重要です。
役割 |
食品の例 |
目安摂取量 |
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タンパク質 (Protein) |
筋肉の構築・修復、免疫機能の維持、ホルモンの生成などに重要な栄養素 |
肉、魚、卵、乳製品、豆類、大豆製品など |
体重1キロ当たり1.6~2.2グラムが目安 |
脂質 (Fat) |
エネルギー源、細胞構造の一部、脳機能のサポートなどに関与 |
アボカド、ナッツ、オリーブオイル、魚、アボカドなど |
総摂取エネルギーの20-35%を脂質で摂取することが目安 |
炭水化物 (Carbohydrate) |
主要なエネルギー源であり、特に脳や筋肉が必要とするエネルギーを提供 |
野菜、果物、穀物、豆類など |
総摂取エネルギーの45-65%を炭水化物で摂取することが目安 |
PFCバランスを実践する際には、個々の目標や体調、ライフスタイルに応じてそれぞれの栄養素の割合を調整します。たとえば、筋肉を増やしたい場合はタンパク質の摂取を重視し、エネルギー効率を向上させたい場合は脂質と炭水化物のバランスを考えるなど、柔軟性が重要です。
ただし、これらのバランスは一概に正しいと言えるものではなく、個々の体調や目標によって異なります。個別のニーズに合わせて調整することが重要です。また、食事の質や摂取カロリーも考慮し、バランスの良い食事を心掛けましょう。
ケトジェニックダイエットのマクロ栄養素比率
ここからは本題に戻り、ケトジェニックダイエットのマクロ栄養素比率について解説をします。
ケトジェニックダイエットの特徴は、低炭水化物、中程度のタンパク質、高脂質の食事構成であることはこれまでも説明してきました。
一般的に、ケトジェニックダイエットのマクロ栄養素比率は以下のようになります。
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タンパク質 (Protein): 15-25%の摂取量
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脂質 (Fat): 65-75%の摂取量
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炭水化物 (Carbohydrates): 5-10%の摂取量
先ほど掲載した表の「一般的な目安摂取量」と比較すると、PFCバランスが大きく異なることが分かるでしょう。
ケトジェニックダイエットにおいては、「脂質多めかな」「炭水化物はとにかく制限しないと」などと感覚的に行ってしまうと効果が実感しにくいです。
PFCバランスの概念を知った上で、タンパク質・脂質・炭水化物を適切な量だけ摂取することがケトジェニックダイエットの成功に繋がります。
ここからはタンパク質・脂質・炭水化物それぞれの栄養素の注意点や種類などを説明していきます。
良質なたんぱく質を選ぶ重要性とタンパク質の種類
ケトジェニックダイエットにおいては、ケトーシスと呼ばれる脂質をエネルギーとして利用する状態を維持することが主要な目標です。この状態を支えるために質の高いタンパク質が重要な役割を果たします。
アミノ酸スコアが優れているたんぱく質は、生体内での効率的な利用が期待され、不要な老廃物が少ないため、「良質なたんぱく質」と呼ばれています。
質の高いタンパク質は、過度な糖新生を抑制し、ケトーシスの状態を促進します。また、低炭水化物のケトジェニックダイエットでは、血糖値の急激な上昇を避ける必要があり、質の高いタンパク質は消化速度が遅く、血糖値の急激な上昇を和らげる役割を果たします。
さらに、質の高いタンパク質は満腹感を促進し、食事の満足感を高めるのに寄与します。これにより、適切な量で効果的な満腹感を得ることが可能です。質の高いタンパク質源には、必要な栄養素も含まれており、栄養バランスを維持し、ダイエット中に必要な栄養素が不足するリスクを軽減します。
また、ケトジェニックダイエットでは脂質を主なエネルギー源とするため、筋肉の維持が重要です。良質なたんぱく質を摂取することで、筋肉の分解を抑制し、健康的な体組成を維持できます。これには、魚、鶏肉、豆腐、卵、ナッツ、種子などの質の高いタンパク質源を組み合わせ、栄養バランスを保つことが重要です。
タンパク質が摂れる食材
肉類 |
鶏肉、七面鳥、鴨、牛肉、豚肉、ラムなど。特に脂肪が多い部位や皮付きのものが良い。 |
魚介類 |
サーモン、マグロ、さば、エビ、ムール貝など。脂質が多く、オメガ-3脂肪酸も摂取できる。 |
卵 |
有機卵やオメガ-3豊富な卵が選ばれます。全卵を摂ることができます。 |
乳製品 |
高脂肪のチーズ、バター、クリーム、全脂乳。ラクトース(乳糖)に敏感な場合は注意が必要です。 |
豆腐 |
豆腐や豆腐製品は低炭水化物であり、適度なタンパク質を提供します。 |
ナッツと種子 |
アーモンド、ピスタチオ、マカダミアナッツ、チアシード、フラックスシードなど。ただし、適量を守る必要があります。 |
非加糖のヨーグルト |
炭水化物が少なく、脂質とタンパク質が豊富な非加糖のヨーグルトが好ましいです。 |
ケトジェニックダイエットでは、適切なタンパク質摂取が重要ですが、同時に過剰なタンパク質の摂取も制限する必要があります。バランスの取れた食事が重要なので、栄養バランスに留意しながら食事を計画することが大切です。
質の高い脂質を選ぶ重要性とタンパク質の種類
ケトジェニックダイエットでは、質の高い脂質を選ぶことが非常に重要です。
身体に良い脂質には、不飽和脂肪酸があります。植物性の脂肪や魚油に豊富です。
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リノール酸…フラワー油、コーン油、大豆油、グレープシードオイル
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α‐リノレン酸…なたね油、大豆油、魚類、大豆・大豆製品
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オレイン酸…オリーブオイル、べに花油、なたね油
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ドコサヘキサエン酸(DHA) ・エンコサペンタエン酸(EPA) …青魚をはじめとする魚介類・貝類・しらす
身体に悪い脂質としては以下のようなものが挙げられます。
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飽和脂肪酸…牛脂、ラード(豚脂)など動物性の脂肪に豊富。鶏皮、ベーコン、脂肪の多い乳製品、洋菓子、アイスクリーム、ココナッツ油など。
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トランス脂肪酸…ショートニング、マーガリンなど、植物油を加工したときにできるもの。
できるだけ質の高い脂質を取ることによって、ケトジェニックダイエットの効果を実感できるように鳴るでしょう。以下に良質な脂質を取るメリットを解説します。
「ケトーシスと呼ばれる特定の代謝状態に到達すること」がケトジェニックダイエットの目標であり、質の高い脂質はこのケトーシスを促進し、体が脂肪を燃焼してケトン体を生成するプロセスをサポートします。
さらに、質の高い脂質には脂溶性のビタミン(A、D、E、Kなど)が含まれており、これらのビタミンは脂質と一緒に摂取することでより良く吸収され、バランスの取れた栄養摂取ができるようになります。
同時に、質の高い脂質は食事の満足感を高め、満腹感を得やすくなります。これにより、食事の間の空腹感を軽減し、適切なカロリー摂取を維持できます。また、質の高い脂質は異なる種類の脂肪酸を提供し、脂肪酸のバランスを維持し、健康的な脂質プロファイル(総コレステロール値、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値、中性脂肪値などの値)を確保できます。
質の高い脂質を選ぶ際には、オリーブオイル、アボカド、ナッツ類、種子、ココナッツオイル、魚の脂、バターなどを積極的に取り入れ、一方でトランス脂肪酸や加工脂肪からはできるだけ遠ざかるよう心がけることが重要です。これらのバラエティ豊かな脂質源を組み合わせることで、栄養バランスを保ちながらケトジェニックダイエットを実践できます。
脂質が摂れる食材
ケトジェニックダイエットにおすすめの脂質は、以下のようなものです。これらの脂質源は、適切な栄養素を提供し、ケトーシスをサポートします。
オリーブオイル |
モノ不飽和脂肪酸を含むオリーブオイルは、サラダドレッシングや料理の仕上げに適しています。 |
アボカド |
アボカドはヘルシーな脂質で満たされており、サラダやスムージーに加えるのが良いでしょう。 |
ナッツと種子 |
アーモンド、くるみ、チアシード、フラックスシードなどのナッツと種子は、食物繊維と一緒に豊富な脂質を提供します。 |
ココナッツオイル |
MCT(ミディアムチェーン脂肪酸)を含むココナッツオイルは、エネルギー源としてすばやく利用されるため、ケトジェニックダイエットに適しています。 |
魚油 |
サケ、マグロ、サバなどの脂の乗った魚には、オメガ-3脂肪酸が豊富に含まれています。 |
バターとギー |
高品質で無添加のバターやギーは、ケトジェニックダイエットにおいて優れた脂質源です。 |
チーズ |
高脂肪で低炭水化物のチーズは、ケトジェニックダイエットに適しています。適度に摂取すると良いでしょう。 |
卵 |
卵黄には良質な脂肪と栄養素が含まれています。ケトジェニックダイエットでは積極的に摂取できます。 |
これらの脂質をバランスよく組み合わせ、摂取することで、ケトジェニックダイエットの適切な栄養バランスを保ちながら、健康的かつ持続可能な方法で脂質を摂取することができます。
炭水化物制限と代替食材
ケトジェニックダイエットでは、通常の食事よりも炭水化物の摂取を制限します。この制限は、体内の糖分を減少させ、代わりに脂肪をエネルギー源として活用することを目的としています。
以下が炭水化物制限において知っておきたいポイントです。
通常、ケトジェニックダイエットでは一日の総炭水化物摂取量は20~50グラム以下に抑えていきます。これにより体は炭水化物からのエネルギーを制限され、代わりに脂質からのエネルギーを生成するよう促されます。また、糖分の制限も重要で、甘い食品や飲み物、加工食品などの糖分は極力避けるべきです。果物も糖分が多いため、摂取を制限するか、低糖質な果物を選ぶことが望ましいです。
主食となる穀物などの制限もケトジェニックダイエットの一環であり、白米、パン、パスタなどの摂取を制限し、代わりに低糖質で高繊維の野菜や健康的な炭水化物源を選ぶことが勧められます。野菜の選択も重要で、緑黄色野菜などの低糖質なものを優先して摂取し、ブロッコリーやスパゲッティスクワッシュ、アボカドなどが適しています。食品を買う際にはラベルも確認もしましょう。加工食品には糖分や炭水化物が含まれる事が多いので、どの程度、炭水化物・糖質が含まれているか注目するべきです。
炭水化物の代替食材
ケトジェニックダイエットでは炭水化物を制限するため、代替となる低炭水化物の食材を利用します。以下に、ケトジェニックダイエットで炭水化物制限をする際の代替食材を掲載します。前掲のタンパク質・脂質の食材表と一部重複しますが、ここまでのおさらいとしてご参照ください。
低糖質の野菜 |
葉物野菜: キャベツ、ほうれん草、レタス、三つ葉、水菜、セリ、白菜、小松菜 その他:ニラ、生姜、いんげん、大根、たけのこ、しそ、アスパラ、カリフラワー、ブロッコリー、冬瓜、もやし、なす、パセリ、かぶ、あさつき、おくら、トマトなど これらの野菜は食物繊維が豊富で、糖質が比較的少ないです。 |
アボカド |
アボカドは脂質が多く、同時に糖質も少ない食材です。脂肪の主成分はモノ不飽和脂肪酸であり、ケトジェニックダイエットにおいて重要なエネルギー源となります。 |
ナッツ・種子 |
アーモンド、くるみ、チアシード、フラックスシードなど 低糖質でありながら脂質やたんぱく質が豊富です。ただし、摂取量には注意が必要で、過剰に摂ると糖質が積み重なる可能性があります。 |
肉・魚 |
肉類:鶏もも肉、鶏むね肉、牛ヒレ肉、牛もも肉、豚ヒレ肉、豚もも肉など 魚類:アジ、サケ、カツオ、マグロ、イワシ、メザシ、アサリ、ハマグリなど 肉や魚はタンパク質が豊富で、脂質も含まれています。これらは糖質がほとんどないため、ケトジェニックダイエットにおいて主要な食材となります。 |
乳製品 |
カマンベールチーズ、プロセスチーズ、カッテージチーズ、パルメザンチーズ、クリームチーズ、植物性の生クリーム、バターなど これらのチーズ類や生クリームは、サラダやデザートに加えても糖質摂取量が抑えられるので、糖質制限中の方におすすめです。 |
低糖質の調味料 |
マヨネーズ、サラダ油、塩、穀物酢、薄口醤油など |
代替甘味料 |
エリスリトール、ステビア、オリゴ糖、還元麦芽糖(マルチトール)など これらは血糖値に影響を与えず、ケトジェニックダイエットに適しています。 |
これらの代替食材を組み合わせることで、ケトジェニックダイエットを実践しながら栄養をバランス良く摂ることができます。
アンダーカロリーの状態を作る
マイクロダイエットにおいてPFCバランスを意識するということと同時に、カロリー摂取量を常に意識することも大切です。
「アンダーカロリー」とは、摂取するカロリーが消費するカロリーよりも少ない状態を指します。これは、ダイエットや体重管理の文脈でよく使用されます。
具体的には、日々のエネルギー消費(基礎代謝と運動による消費)よりも少ないカロリーを摂取することで、体はエネルギーの不足を補うために脂肪を燃焼し、体重が減少するとされています。この状態を作り出すことで、脂肪を効率的に減少させることが期待されます。
ただし、健康的なダイエットを考える際には、極端なアンダーカロリー状態は避けるべきです。急激なカロリー制限や栄養不足は身体に悪影響を及ぼす可能性があります。バランスのとれた食事と適度なエネルギー摂取が、健康的で持続可能なダイエットの基本です。
カロリー消費量の計算方法
カロリー消費量は、基礎代謝と活動代謝の合計で構成されます。以下は、これらの代謝を計算する基本的な方法です。
基礎代謝(BMR)の計算
ミフリンセントジョール方式:
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男性:BMR = (10 × 体重[kg]) + (6.25 × 身長[cm]) - (5 × 年齢[歳]) + 5
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女性:BMR = (10 × 体重[kg]) + (6.25 × 身長[cm]) - (5 × 年齢[歳]) - 161
ミフリンセントジョール方式は信頼のできる計算式として、幅広く用いられています。こちらの方式を使い、まずはご自身の基礎代謝を計算してみましょう。
以下のようなツールを使って簡単に計算することもできます。
活動代謝の計算
基礎代謝に運動による活動量を掛け合わせます。活動レベルによって異なりますが、以下の一般的な目安があります。
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ほとんど運動しない(座位作業中心):BMR × 1.2
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軽い運動(週に1~3回の軽い運動):BMR × 1.375
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中程度の運動(週に3~5回の中程度の運動):BMR × 1.55
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高度な運動(毎日激しい運動):BMR × 1.725
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極めて高度な運動(日中ほとんど活動し続ける):BMR × 1.9
基礎代謝と活動代謝を合算することで、まずは自分の「消費カロリー」を把握しましょう。
アンダーカロリーを作る理由
アンダーカロリーを作るというと、たんに「摂取カロリーを少なくすることで痩せるからでは」と考える人が多いです。
しかし、アンダーカロリーを作る理由は非常に科学的です。脂肪が減少するまでの4つのステップについて詳細に解説します。
1. アンダーカロリーの状態を作る
このステップでは、摂取カロリーが消費カロリーを下回る「アンダーカロリー」の状態を作ります。食事によって体内に摂り込まれるエネルギーが、基礎代謝や活動によって消費される量よりも少ない状態を指します。これにより、体は脂肪をエネルギー源として活用し始めます。
2. 脳が脂肪分解命令を出す
アンダーカロリーの状態になると、脳は脂肪分解の命令を出します。脂肪組織からエネルギーが必要であることを感知し、脂肪細胞内の三酸グリセリドを分解して脂肪酸やグリセロールを生成します。
3. アドレナリンなどのホルモンが分泌される
脳からの指令に応じて、アドレナリンやその他のカテコラミンといったホルモンが分泌されます。これらのホルモンは、脂肪細胞に作用して脂肪分解を促進します。アドレナリンは、脂肪酸を放出して血液中に移動させます。
4. アドレナリンと体脂肪が出会って分解する
アドレナリンが分泌され、血流によって脂肪組織に到達すると、脂肪細胞の表面にある受容体に結合します。これにより、脂肪細胞から脂肪酸が放出され、血液中に流れ出ます。この脂肪酸は各組織でエネルギーとして利用されます。
このようなロジックがあり、アンダーカロリーを意識したダイエットは効率的に痩せることができるのです。効果的に脂肪分解が行われるという性質からケトジェニックダイエットとの相性も良いです。
ケトジェニックダイエットの食事プランの作成
ケトジェニックダイエットの食事プランを作成する際には、以下のポイントを考慮すると良いでしょう。
食事のPFCバランス(タンパク質・脂質・糖質のバランス)を3:6:1にする
PFC=3:6:1は、つまりカロリー比タンパク質3:脂質6:炭水化物1を指し、この比率がケトジェニックダイエットにおいて重要です。
ケトーシスに切り替わると、体は主に脂質とタンパク質からエネルギーを得ることが求められます。特に筋肉の減少を防ぐために、タンパク質を適切に摂取することが一般的です。
以下は自分の体重に基づいてタンパク質摂取量を計算する式です。
まず、トレーニングの有無によって以下の範囲からタンパク質の摂取量を決めます。
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トレーニングしている人:体重1kgあたり2.2g〜2.3g
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トレーニングしていない人:体重1kgあたり1g〜1.2g
次に、以下の計算式に従ってバランスのとれたPFC比率を計算します。
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タンパク質の摂取量(g)=自分の体重 × 選んだトレーニングに基づく係数
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タンパク質の摂取カロリー(kcal)=タンパク質の摂取量(g) × 4
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脂質の摂取カロリー(kcal)=タンパク質の摂取カロリー(kcal) × 2
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脂質の摂取量(g)=脂質の摂取カロリー(kcal) ÷ 9
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炭水化物の摂取量(g)=タンパク質の摂取量(g) ÷ 3
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炭水化物の摂取カロリー(kcal)=炭水化物の摂取量(g) × 4
例として、トレーニングをしている80kgの個人の計算結果を挙げると、
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タンパク質:184g(736kcal)
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脂質:163.5g(1472kcal)
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炭水化物:61g(244kcal)
このように、適切なPFCバランスを保ちながら、ケトジェニックダイエットに挑戦するための摂取量を計算できます。
糖質制限とケトーシスの重要性
糖質を1食20g(1日60g)に制限し、身体を糖質からのエネルギー摂取から解放し、代わりにケトン体代謝に早急に切り替えることがケトジェニックダイエットの基本です。
ケトーシスに切り替えるためには、厳格な糖質カットが必要です。1日60gの糖質摂取量は、単に主食を摂ることを許可するものではありません。糖質の摂取は基本的に野菜や調味料に限られ、食事においては「糖質を摂取できる」という認識を避けるべきです。
先ほどの例で示したように、トレーニングをしている80kgの個人の場合でも、炭水化物が61gであっても、糖質60gを厳守するようにします。特にケトーシスへの切り替え期間(約2日間)では、糖質を30g以下に徹底することが望ましいです。
ケトーシスに入った後は、糖質の過剰摂取には慎重であるべきです。インスリン感受性が低下しており、過剰な糖質摂取でインスリンが過度に分泌され、結果として太りやすくなる可能性があるためです。ケトジェニックダイエットの成功には、糖質摂取量を適切に管理することが極めて重要です。
良質な脂質の選択
糖質を制限する代わりに、タンパク質や脂質を適切に摂取しましょう。脂質を十分に摂っても体脂肪が減少する仕組みについて不明点があるかもしれませんが、これには理由があります。
糖質の摂取が制限されると、身体はエネルギーを得るために蓄積した体脂肪を分解します。これにより生成されるエネルギー源が「ケトン体」であり、これが糖質の代わりにエネルギー源として活用され、結果として体脂肪が減少します。脂質の適切な摂取は、このダイエットの効果を最大限に引き出す鍵となります。油を摂取する際には、良質なものを選ぶことが非常に重要です。
主な油の種類には、以下の2つがあります。
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不飽和脂肪酸: 常温で液体であり、植物油や魚に多く含まれ、体内で作れない必須脂肪酸を含みます。
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飽和脂肪酸: 劣化や加熱に弱く、肉や乳製品などに多く含まれます。オメガ3系脂肪酸、オメガ6系脂肪酸、オメガ9系脂肪酸の3つに分かれ、それぞれ特有の効果があります。
良質な脂質が摂取できる食材については、前掲の表を参考にしてください。
水分摂取
また、食事プラントは異なりますが、水分についても1日2リットル程度は摂取することを目安にしましょう。
体内では、糖質は水分と結びついて主に肝臓や筋肉に蓄えられています。通常、糖質1gにつき3gの水分が結びついていると言われています。
ケトジェニックダイエットを始めると、約2~7日かかって糖質が排除され、同時に水分も急速に失われるため、体重が約1~2kg減少します。つまり、糖質を制限することは体内の水分を減少させることと同等です。
ただし、糖質が減少した段階で減少するのは主に水分であり、脂肪が減少するわけではありません。脂肪の減少が始まるのは、水分が抜けた後の段階です。
糖質が排除されると、体は水分を保持できなくなり、常に水分不足になりやすく、注意深く水分を摂る必要があります。糖質制限中は特に水分補給が重要であり、水を積極的に摂ることが推奨されます。
また、ケトン体は酸性の性質が強く、その蓄積は体内を酸性にし、体調不良や強い体臭の原因となり得ます。
ケトン体が体内に溜まらないようにするためには、積極的に水を摂り、尿として排泄することが重要です。適切な水分摂取は、ケトジェニックダイエットやその他の状況において、体内のケトン体の制御と健康維持に繋がります。
ケトジェニックダイエットのレシピ
以下はケトジェニックダイエットに適した基本的なレシピの例です。ただし、各人の体重、目標、お好みによって調整が必要です。食事のバリエーションを増やし、自分に合った味付けを見つけることが大切です。
ハム、マッシュルーム、ほうれん草のフリッタータ
カロリーが低く、ランチまで満足感のあるフリッタータ。
材料
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オイル 小さじ1
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マッシュルーム(スライス) 80グラム
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ハム 50グラム
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ほうれん草 80グラム
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溶き卵 中4個
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チェダーチーズ 大さじ1
STEP 1
グリルを最高温度で予熱します。オーブン使用可能なフライパンでオイルを中火で熱します。マッシュルームを加え、ほぼ柔らかくなるまで2分間炒めます。ハムとほうれん草を加え、ほうれん草二熱が通るまでさらに1分間調理します。十分にブラックペッパーと塩を加えて味を調えます。
STEP 2
火を弱め、卵を注ぎます。卵がほぼ固まるまで、3分間そのまま調理します。チーズを散らし、グリルで2分間焼きます。熱いままでも、冷たくてもお召し上がりいただけます。
焼き鮭
ランチや夕食に、簡単なベイクド・サーモンでオメガ3を摂取できます。サラダや野菜との相性も抜群。
材料
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サーモン切り身 4切れ
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オリーブオイルまたはバター 大さじ1
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刻んだハーブ、レモンスライス、蒸したブロッコリー(お好みで)
STEP 1
オーブンを180℃に熱し、サーモンの切り身にオリーブオイルまたはバターを塗り、下味をつける。
STEP 2
サーモンの切り身を耐熱皿に入れる。サーモンを柔らかく焼きたい場合は蓋をし、身を固めに焼きたい場合は蓋をしない。
STEP 3
10~15分(厚さ1cmあたり約4分)、フォークで簡単にほぐせるようになるまで焼く。お好みで、刻んだハーブ、レモンスライス、蒸したブロッコリーを添える。
バーベキューステーキ&トマトサラダ
ステーキを焼いてトマトサラダとあわせる。ランチや軽い夕食にぴったり。
材料
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トマト 500グラム
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オリーブオイル 大さじ2
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バベットステーキ 500グラム
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赤玉ねぎ(厚切り) 2個
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アーティチョークのオイル漬 200グラム
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フェタチーズ 150グラム
ドレッシング
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赤ワインビネガー 大さじ2
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オリーブオイル 大さじ3
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長ネギ(小口切り) 3本
STEP 1
赤ワインビネガー、オリーブオイルを泡立て器で混ぜ合わせ、ドレッシングを作る。トマトをスライスし、大きめの皿に並べ、軽く塩をふる。オイルの大半をかけておく。
STEP 2
フライパンを強火に熱し、ステーキの両面を2~3分ずつ、焦げ目がつくまで焼く。玉ねぎに残りの油を回しかけ、焦げ目がつくまで焼く。輪切りにしておく。
STEP 3
ステーキをスライスし、トマトを並べる。残っている肉汁をかける。アーティチョークと玉ねぎを散らし、フェタチーズをのせる。ドレッシングをかける。
ケトジェニックダイエット中のトレーニング前後の食事
ケトジェニックダイエット中もトレーニングを行う場合、前後の食事にも気をつけましょう。以下はトレーニング前後それぞれの食事のポイントです。
トレーニング前の食事
ケトジェニックダイエットの際は、トレーニング前でも糖質を摂取しないことが一般的です。このダイエットの原則は、エネルギー源を糖質から脂質に変え、脂肪をより効果的に燃焼させることにあります。
糖質を摂取すると、ケトーシスの状態が終わり、ケトジェニックダイエットの減量効果が損なわれる可能性があります。代わりに、トレーニング前にはコーヒーやMCTオイルを摂取して、カフェインと脂質を補給することがおすすめです。また、プロテインを摂取することは筋肉の分解を防ぐ上で効果的です。
ケトジェニックダイエット中は常に脂質が主要なエネルギー源であることを意識することが重要です。これにより、タンパク質が分解されてエネルギーを生成しようとする過程が抑制されます。この理解をもとに、糖質を避けつつも脂質を摂るよう心がけましょう。
さらに、トレーニング中にはBCAA(必須アミノ酸)を補給して筋肉の分解を防ぐよう心がけましょう。ケトジェニック期間の減量では、筋肥大と減量を同時に目指すことは難しいため、適切なアプローチを取ることが重要です。
トレーニング後の食事
筋トレ後、すぐに食事をとれる場合は、ケトジェニックに適した食材を摂取しましょう。例えば、ゆで卵などで、脂質も摂りながらたんぱく質を補給できます。すぐに食事が難しい場合は、プロテインサプリメントを摂取することがおすすめです。これにより、たんぱく質を手軽に補給できます。
何よりもPFCバランスをケトジェニックに適した割合で保つことが重要です。これにより、エネルギー源を脂質に頼りながら、必要な栄養素をバランスよく摂取することができます。
ケトジェニックダイエットの成功か失敗かは、一日に必要なカロリーやPFCバランスを意識することで大きく影響されます。そのため、ケトジェニック初心者はなんとなくで行わず、適切な知識や計画をもとに実践することが重要です。
通常の食事とは異なるアプローチなので、慎重に注意が必要です。運動前には通常糖質が必要だと感じるかもしれませんが、ケトジェニック中は脂質が主要なエネルギー源となります。設定したPFCの範囲内で脂質を積極的に摂取することがおすすめです。